企画・調査・編集といったコーディングを伴わない仕事でも、数か月〜数年続くプロジェクトになると、チャットの往復だけでは回らなくなります。前提を毎回説明し直す/決定の経緯が残らない/成果物のバージョンが分からなくなる——この3つが必ず出てくるからです。本稿は、通常のチャット・Projects・Claude Code を、前提の共有・変更履歴・差分の確認・検証の自動化という観点で比較し、「コーディングしないのに Claude Code を使う意味はあるのか」という問いに正面から答えます。1人の場合とチームの場合、そして非エンジニアをどう巻き込むかまで扱います。
CLAUDE.md を共有フォルダに置けば全員に効く)、違うのは効く相手。単発の相談では起きないが、数か月続くと確実に発生する。どのツールを選ぶかは、この3つのどれに困っているかで決まる。
| 問題 | 具体的にどうなるか | 解決に必要なもの |
|---|---|---|
| ① 前提が積み上がらない | 会話のたびに背景・制約・用語を説明し直す。説明が微妙に違うので回答も微妙にブレる | 恒常的な指示と参照資料の置き場 |
| ② 決定の経緯が消える | 半年後に「なぜこの方針にしたのか」が誰にも分からない。同じ議論を何度もやり直す | 変更履歴(いつ・何を・なぜ) |
| ③ 成果物が散らかる | 企画書_最終_v3_修正版.docx が量産される。どれが正か分からない | 正本が1つに定まる仕組みと差分の確認 |
同じ Claude でも、扱えるものと残るものが違う。継続PJで効く観点だけに絞って並べる。
| 観点 | 通常のチャット | Projects | Claude Code |
|---|---|---|---|
| 前提の共有 | 会話ごとにやり直し | プロジェクトナレッジ+カスタム指示 | CLAUDE.md+リポジトリ全体 |
| 成果物の置き場 | 会話の中(後から探しにくい) | 会話の中。ナレッジへは手動で戻す | ファイルとして確定する |
| 変更履歴 | なし | なし(上書き) | Git(いつ・誰が・何を・なぜ) |
| 差分の確認 | 不可 | 不可 | 可能(変更箇所だけレビューできる) |
| 検証の自動化 | 不可 | 不可 | 可能(規約違反・リンク切れ等を機械的に検出) |
| 複数人での共有 | 会話の個別共有のみ | Team・Enterpriseでプロジェクト共有 | GitHub等のリポジトリ経由 |
| 導入の敷居 | なし | 低い(ブラウザだけ) | 中(ブラウザ版なら大きく下がる) |
| 向く用途 | 使い捨ての相談・発散 | 参照前提が固定的な反復作業 | 成果物が積み上がる継続PJ |
名前のせいで誤解されやすいが、Claude Code が提供しているのは「プログラミング」ではなく「ファイルとGitを触れる作業環境」。この違いが分かると、企画系での使いどころが見えてくる。
企画書・議事録・調査メモ・意思決定ログ——これらはすべてテキストで、「前回から何が変わったか」が本質的な情報である。
CLAUDE.md がプロジェクトの憲法になるClaude Code はリポジトリ内の CLAUDE.md を常時読み込み、恒常的なルールとして扱う。Projects のカスタム指示と役割は似ているが、決定的な違いはバージョン管理されること。
企画系でも機械的に確認できることは多い。人間のレビューを、確認作業から判断に集中させられる。
1人なら合意形成のコストがないため、最初から Claude Code に寄せてよい。障壁は自分の慣れだけ。
| 要素 | やること | 効果 |
|---|---|---|
| リポジトリを1つ作る | PJごとにフォルダを分け、Gitで管理する | 正本が定まり、履歴が残る |
CLAUDE.md を書く | 目的・前提・用語・書式・やらないこと | 毎回の説明が不要になる。最初に効果を実感する部分 |
| コミットを習慣にする | 区切りごとに、理由を書いて記録する | 半年後の自分が経緯を読める |
| GitHubは任意 | 1人ならローカルだけでも成立する | ただしバックアップと閲覧のためには置く価値がある |
| 発散はチャットで | 整理前の思考は通常のチャットで行う | リポジトリに未整理のものを持ち込まない |
チームの難所は技術ではなく参加のしやすさ。全員に同じ使い方を求めると、たいてい一部が脱落する。
全員がClaude Codeを使う必要はない。役割で入口を変えるのが現実的。
| 役割 | 使うもの | やること |
|---|---|---|
| 書く人 (1〜2名) | Claude Code | 成果物の作成・更新、リポジトリの管理、ルールの整備 |
| レビューする人 | GitHubのブラウザ画面 | 差分を見てコメントする。ターミナルは不要で、変更箇所だけ読めばよい |
| 参照する人 | ブラウザ(公開ページ等) | 完成物を読む。Gitの存在すら意識しなくてよい |
| 相談する人 | Projects | 共有ナレッジを前提に個別の検討を行う |
CLAUDE.md に集約する。人に覚えてもらうのではなく、仕組みに覚えさせる。新しく入った人も、Claudeが自動的に流儀に従う。3者は排他ではない。思考の段階によって置き場所を変えると、それぞれの長所が素直に効く。
ここまでは GitHub のような外部リポジトリが使える前提だった。しかし実務では「会社が承認したSaaSしか使えず、新規の承認を通すのが極めて難しい」という制約が頻繁にある。とくに非IT部署では、使えるものの範囲は自分で決められない。これは努力や理解の問題ではなく、単に環境の問題である。
したがってここでは「承認を取りに行く方法」ではなく、いま手元にあるもの——Claude と、社内のファイルサーバーや M365/Google Workspace と、自分のPC——だけでどこまでできるかを扱う。結論から言えば、かなりのところまでできる。
ここを混同していると、必要のない諦め方をしてしまう。
どの案になるかは環境が決めるもので、上の案が偉いわけではない。案Cでも「前提が積み上がらない」問題は解決するので、自分の環境で成立するところから始めればよい。
3案の違いは「Gitを使うか」「Claude Code を使うか」の2点だけ——チームで案B・案Cを検討している場合は、8-6 で Projects と Claude Code の使い分けを整理している。
| 段階 | 前提 | 構成 | 得られるもの/失うもの |
|---|---|---|---|
| 案A ローカルGit | PCにソフトを入れられる | 作業リポジトリはローカルディスクに置く(C:\work\ 等)。確定した成果物だけを共有の置き場所に出す | 履歴・差分・巻き戻し・CLAUDE.mdの版管理が手に入る。失うのは差分レビューの共有のみ |
| 案B 共有ドライブ中心 Claude Code を使う | Gitは使わない/使えない | 成果物を最初から共有フォルダ(ファイルサーバー/SharePoint/Drive)で管理し、標準のバージョン履歴を履歴として使う | 共有された履歴とコメントは残る。失うのは差分レビューと検証の自動化 |
| 案C Projects中心 ブラウザだけ | Claude Code自体が使えない | Projects で前提を共有し、成果物は共有ドライブへ。意思決定ログを1枚の文書として手で維持する | 前提の共有(問題①)は解決。問題②③は運用ルールで凌ぐ |
C:\work\プロジェクト名\ のように、同期フォルダの外に置く。CLAUDE.md)を置く。中身は次の 8-4 のひな型と同じでよい。Gitを使わず、共有の置き場所と標準機能だけで組む。
① 置き場所を決める(クラウドでなくてよい)
| 置き場所 | バージョン履歴 | 備考 |
|---|---|---|
ファイルサーバーの共有フォルダ\\server\share\ や Z:\ | 環境による。Windowsサーバーなら「以前のバージョン」が有効な場合があり、その場合は世代が取れる(有効かは情シスに確認) | 承認の観点では最も通りやすい——そもそもSaaSではない。同期クライアントを介さないので同期の競合が起きないのも利点 |
| SharePoint/OneDrive | 標準で有効(保持数は設定次第) | 社外からも使える。同期クライアント経由でローカルフォルダとして見える |
| Google ドライブ | 自動。Googleドキュメントは版に名前を付けられる | 同上 |
② フォルダ構成を決める
③ ファイル名にバージョンを付けない
企画書_v3_最終.docx のような命名をやめる。バージョン履歴が使えなくなり、どれが正本か分からなくなる原因そのものだから。ファイル名は 企画書.docx のまま固定し、版の管理は履歴機能に任せる。④ バージョン履歴を確認・活用する
⑤ 前提メモを1枚作る(ここが最も効く)
CLAUDE.md の代わりになる。会話のたびにこのファイルを添付する(またはProjectsのナレッジに置く)だけで、毎回の説明が消える。案Bで最初に作るべきものであり、効果を一番早く実感できる部分でもある。⑥ 意思決定ログを追記していく
⑦ レビューは変更履歴機能で行う
Claude Code 自体が使えない場合。やることは案Bとほぼ同じで、前提メモの置き場所が変わる。
2026-08-15 ナレッジの書式見本を差し替え(理由:新レギュレーション適用のため) の1行で足りる。これがあるかないかで、案Cの実用性が大きく変わる。案B・案Cをチームで回すとき、ここが一番迷うところ。先に結論を書くと、この2つは排他ではなく、役割が違うので併用が普通。「どちらが優れているか」ではなく「誰が何をするか」で決まる。
前提:案Bでは Claude Code が共有ドライブを直接読み書きできる
Z:\ 等)なら、そのまま Claude Code から読み書きできる。ネットワーク上の普通のフォルダなので、特別なことは何も要らない。| 観点 | Projects | Claude Code(共有ドライブ上・Gitなし) |
|---|---|---|
| 誰が使えるか | 全員。ブラウザだけで、教育コストほぼゼロ | 導入と多少の慣れが要る |
| 前提の共有 | 自動。そのProjectで会話する全員に効く | 自動。CLAUDE.md を共有フォルダに置けば、そこで作業する全員に効く |
| ファイルの扱い | 会話ごとにアップロードし直す | フォルダを直接読み書きできる |
| 複数ファイルの横断 | 苦手。ナレッジに入れた範囲まで | 得意。「全部見て矛盾を探して」ができる |
| 成果物の確定 | 会話から手でコピーして保存 | 正本に直接書き込める |
| 一括処理・点検 | できない | できる(表記ゆれの統一、必須項目の抜け確認など) |
| 同時に触ったとき | 会話は各自独立で衝突しない | 同じファイルを同時に編集すると競合する(8-7参照) |
CLAUDE.md(前提メモ)を共有フォルダに置けば、そのフォルダで Claude Code を使う人には全員に自動で効く——毎回添付する必要はない。CLAUDE.md はそのフォルダで作業する人に効く。Claude Code を使わない人にも前提を効かせたいなら Projects が要る——これが併用する理由になる。CLAUDE.md 側の利点:ファイルなのでいつ・誰が・なぜ変えたかを残せる(案Aならバージョン履歴、案Bなら意思決定ログ)。Projectsのカスタム指示は上書きで履歴が残らないため、前提そのものの変遷を追いたいなら CLAUDE.md 側に正本を置くのが理にかなう。人数と役割で決める
| 状況 | 選ぶもの | 理由 |
|---|---|---|
| 多人数が各自バラバラに相談する (企画メンバー全員が使う) | Projects | 全員に同じ前提が効き、アウトプットの品質が揃う。教育コストが要らない |
| 少数が集中して成果物を作る (実際に書くのは1〜2人) | Claude Code | ファイルを直接扱え、横断的な点検ができるぶん制作が速い |
| その両方がある (多くの継続PJはこれ) | 併用 | 下の分担にする |
案B・案Cとも、共有ドライブ上の1ファイルを正本にするため、同時編集の競合が起こり得る。Gitのようにマージしてくれる仕組みはない。
意外に見落とされるが、SharePoint も Google ドライブも標準でバージョン履歴を持っている。Gitほど精密ではないが、企画文書ならこれで足りる場面は多い。
| 欲しい機能 | Git | M365/GWS での代替 |
|---|---|---|
| 正本が1つに定まる | ○ | ○ 共有ドライブ上の1ファイルを正本と決めるだけで成立する |
| 変更履歴が残る | ○ | ○ バージョン履歴。Googleドキュメントは版に名前を付けられるので節目を残しやすい |
| 過去に戻せる | ○ | ○ 履歴から復元できる |
| 変更内容のレビュー | ○ | △ Word/Googleドキュメントの変更履歴・コメントで部分的に代替できる |
| 変更理由が残る | ○ コミットメッセージ | △ 意思決定ログを1枚別に作り、手で書く運用で補う |
| 検証の自動化 | ○ | × ここは代替が難しい |
日付/決めたこと/理由/却下した案 を追記していくだけでよい。コミットメッセージの役割を手作業で置き換える発想で、これがあるかないかで半年後の再開速度がまったく違う。そもそも交渉できる立場にないことのほうが多いので、ここは読み飛ばして構わない。案A・案Bだけで実務は回る。
ただ、たまたま情報システム部門と話す機会ができたときのために、通りやすい言い方だけ書いておく。審査する側の関心は「データの流出先が増えるかどうか」にある、という一点を押さえておくと話が早い。
A社/XX万円)、迷うものは書かない——こうした判断を毎回人が思い出すのではなく、CLAUDE.md や Projects の指示に書いて自動的に効かせる。制約が強い環境ほど、この仕組み化がそのまま安心材料になる。3者以外にも、企画系の継続PJで効く仕組みがある。必要になってから足せばよいので、最初から全部揃える必要はない。
| 手段 | できること | 向く場面 |
|---|---|---|
| コネクタ(MCP) | 既存の業務ツール(ファイル共有・ドキュメント・課題管理など)にClaudeを接続する | すでに他のツールに資料が溜まっているチーム。移行せずに繋げられる |
| スキル | 繰り返す手順を手順書として登録し、名前を呼ぶだけで実行する | 定型作業がある場合(定例議事録、週次レポート、企画書の雛形) |
| アーティファクト | 成果物を共有できるページとして公開する | リポジトリを見せたくない相手に結果だけ渡したいとき |
| 定期実行 | 決まった時刻に処理を走らせる | 週次の進捗まとめ、外部情報の定点観測 |
| サブエージェント | 調査など重い作業を切り離して並行実行する | 本流の作業を止めずに背景調査を進めたいとき |
CLAUDE.md+コミットの習慣」だけで回してみて、不便を感じた箇所にだけ足すのが結果的に早い。いきなり全部やらない。各段階で得られるものがはっきりしているので、途中で止めても損はない。
CLAUDE.md を書く(半日)。目的・前提・用語・書式・やらないこと。この時点で問題①②に効き始める。CLAUDE.md。ファイルを1つ作って前提を書くだけで、毎回の説明が消える。Gitやレビューの話は、その効果を実感してからで遅くない。各サービスの提供形態・プラン条件・機能(2026年8月時点)は変更されることがあります。導入前に公式情報で最新の条件をご確認ください。本稿は運用設計の一般的な整理であり、特定の構成を保証するものではありません。