Case Study · FIRE Simulation from 40
40歳・共働き世帯のFIREシミュレーション
年収800万/貯蓄300万/子ども1人・配偶者あり(共働き)
「40歳から始める投資計画」を、1つのモデル世帯に当てはめて数字で追ったケーススタディ。家計から投資余力を割り出し、月15万の積立を3つの利回りシナリオで年次シミュレーションする。結論を先に言うと——共働きの入金力を活かせば、50歳前後で「もう頑張らなくていい地点(Coast FIRE)」、55〜60歳で早期リタイアが射程に入る。
本人:40歳・年収800万
配偶者:共働き(例:年収400万)
子ども:1人
貯蓄:300万
💡 本記事は一般的な情報提供・教育目的の試算例であり、投資助言ではありません。利回り・税制・年金・教育費はすべて仮定の数値で、将来の成果や元本は保証されません。実際の判断はご自身の状況に合わせ、最新の一次情報・専門家でご確認ください。
1モデル世帯と前提
試算を再現できるよう、前提をすべて明示する。数字は分かりやすさ優先の仮定であり、実在の世帯ではない。
| 項目 | 設定 |
| 本人 | 40歳・会社員・年収800万(額面) |
| 配偶者 | 共働き・会社員・年収400万(額面)→ 世帯年収1,200万 |
| 子ども | 1人(本試算では現在6歳・小学校〜大学を想定) |
| 現在の貯蓄 | 300万円 |
| 住まい | 持ち家・住宅ローン返済中(低金利のため繰上げは急がない前提) |
| 投資方針 | 低コストの全世界株インデックスを軸に、長期・分散・自動積立 |
| 目標 | 65歳の完全リタイアを土台に、可能ならより早い Coast FIRE/早期リタイア |
共働きは FIRE において強力な武器。2馬力の入金力に加え、片方が働き続ける選択肢があるため、リスク許容度も上げやすい。この試算はその強みを前提にしている。
2家計から投資余力を出す
「いくら投資できるか」は願望でなく家計から逆算する。世帯手取りから支出を引いた残りが投資余力。
| 項目(月額・概算) | 金額 |
| 世帯手取り(年収1,200万の目安) | 約 75万円 |
| 住居費(ローン・管理費等) | ▲ 15万円 |
| 生活費(食費・光熱・通信・日用品) | ▲ 22万円 |
| 子ども関連(教育・習い事) | ▲ 8万円 |
| 保険・車・その他固定費 | ▲ 7万円 |
| こづかい・娯楽・外食(=楽しみ枠) | ▲ 8万円 |
| 投資に回せる余力 | 約 15万円/月 |
ポイントは「楽しみ枠8万」を最初から確保していること。削って投資に全振りしない。共働きの手取りなら、娯楽を残したまま月15万の積立が現実的に成立する。この"我慢しない"設計が20年の完走率を上げる。
手取り・支出は家庭差が大きい。ここでは分かりやすい概算を使用。実際は自分の家計簿から投資余力を出すこと。ボーナスは変動が大きいので、月次のベース額(15万)で計画し、ボーナスは上乗せ・臨時費用の緩衝に回すのが崩れにくい。
3300万の貯蓄をどう配置するか
手元の300万を全額投資に回すのは、子育て世帯では危険。まず"守り"を確保する。
- 生活防衛資金:約240万を現金で温存(世帯生活費の5〜6か月分)。共働きなら片働きに一時的に戻れる分、6か月でも十分機能する。暴落時に「売らずに待てる」土台。
- 初期投資:60万を投入。残りを最初の元本にして、複利のスタートを少し前に倒す。
- 教育費の大きな山(大学)は、後述のとおり別枠で意識(→ 8章)。
4夫婦での制度の使い方
共働きの利点は非課税の器が2人分あること。月15万を、税優遇のある口座から埋めていく。
| 配分(月15万の例) | 金額 | ねらい |
| 本人の新NISA(つみたて枠) | 6万 | 流動性の高い主力。全世界株インデックス |
| 配偶者の新NISA(つみたて枠) | 5万 | もう1人分の非課税枠を活用 |
| 本人の iDeCo | 2万 | 所得控除の節税。60歳まで固定の"固い老後資金" |
| 配偶者の iDeCo | 2万 | 同上(掛金上限は職業で異なる) |
順序の考え方:まず流動性の高い新NISA(教育費や不測の事態にも対応可)を厚めに。iDeCo は節税が強力だが60歳まで引き出せないので、教育費ピークと重なる40代は入れ過ぎない。企業型DCがある場合は、運用商品を低コストなものへ見直すだけでも効果がある。
新NISA・iDeCo の年間枠や iDeCo の掛金上限(職業・企業年金の有無で変動)、加入可能年齢は改正され得る。加入前に必ず最新の公式情報で確認すること。
5資産推移シミュレーション(3シナリオ)
初期投資60万+毎月15万を、40歳から積み立てた場合の評価額の推移。年率3%(保守)/5%(標準)/7%(強気)の3本で、幅として捉える。税・手数料は簡略化した目安。
| 年齢 | 累計元本 | 3% | 5%(基準) | 7% |
| 45歳 | 960万 | 約1,040万 | 約1,100万 | 約1,160万 |
| 50歳 | 1,860万 | 約2,180万 | 約2,430万 | 約2,720万 |
| 55歳 | 2,760万 | 約3,500万 | 約4,140万 | 約4,930万 |
| 60歳 | 3,660万 | 約5,030万 | 約6,330万 | 約8,060万 |
| 65歳 | 4,560万 | 約6,820万 | 約9,140万 | 約1億2,500万 |
基準(5%)シナリオの読み方:65歳で約9,100万。4%ルールで取り崩せば年約366万。これに夫婦の公的年金(例:世帯で月25万前後=年300万強)が乗るので、老後の生活費は十分に賄える計算になる。「老後2,000万問題」は、この入金力なら大きく超過達成できる。
重要:この表は「当たる予測」ではなく幅のあるシナリオ。実際は毎年上下に激しく揺れ、評価額が前年より減る年も必ずある。3%でも65歳6,800万に届く一方、暴落のタイミング次第では下振れもある。だから生活防衛資金で"待てる"状態を保ち、一喜一憂しないことが完走の条件。
6Coast FIRE はいつ来るか
FIRE の隠れた本命は「完全リタイア」より、もう積立をやめても複利だけでゴールに届く地点=Coast FIRE。ここに達すると、以降は入金をゆるめて人生に振り向けられる。
Coast FIRE 到達
約50歳
資産 約2,400万の時点
その後(積立ゼロ)
65歳で約5,000万
年5%成長の想定
基準(5%)シナリオでは、50歳・資産約2,400万の時点で「これ以上積み立てなくても、複利だけで65歳に約5,000万に育つ」計算になる。つまり50歳以降は積立を続ける義務がなくなる。実際には積立を完全に止める必要はないが、「もう頑張らなくてもいい」という心理的な自由は大きい。時短勤務・転職・やりたい仕事への挑戦など、働き方の選択肢が一気に広がる。
Coast FIRE を"主役"に据えると、ゴールが15年も手前に感じられる。「65歳で1億」より「50歳でもう自由」の方が、日々の積立の意味を実感しやすい。
7早期リタイア(セミFIRE)の現実味
「完全に働かない」より、共働き世帯は柔軟な半リタイアが現実的で楽しい。数字で見てみる。
| 年齢 | 資産(5%基準) | 取れる選択肢 |
| 50歳 | 約2,400万 | Coast FIRE。積立をゆるめ、夫婦どちらかが時短・転職。人生の再設計を始められる |
| 55歳 | 約4,140万 | サイド/Barista FIRE。生活費の一部を軽い労働で、残りを資産で。片働き+資産で暮らせる水準に近づく |
| 60歳 | 約6,330万 | 早期リタイア+年金ブリッジ。65歳の年金開始まで年300〜360万を取り崩しても、運用が支える。以降は年金+残資産で安泰 |
| 65歳 | 約9,140万 | 完全リタイア。4%取り崩し年約366万+公的年金。生活は余裕をもって成立 |
共働き世帯の勝ち筋:「二人同時に完全リタイア」を狙うより、50歳でCoast FIRE → 55〜60歳で片方または両方が半リタイアという段階的な緩め方が、リスクも小さく満足度も高い。片方が働き続ける限り、暴落が来ても資産の取り崩しを止められる——これが2馬力の最大の安全余裕。
8教育費・住宅の織り込み
子ども1人の最大の山は「大学」。ここを織り込まないと計画が崩れる。
- 大学費用は"別バケツ"で用意:私立文系4年で概ね数百万規模。本人が18歳(=本人52歳頃)に山が来る。この時期は新NISAの積立を一部その原資に回す/取り崩すことも想定に入れておく(新NISAは引き出せる柔軟さがここで効く)。
- 教育費ピーク時は積立を一時的に減らしてOK:上のシミュレーションは月15万一定だが、実際は50代前半に積立を月8〜10万へ落とす年があってよい。Coast FIRE を50歳で通過していれば、その後の減額は計画を大きく崩さない。
- iDeCoに寄せ過ぎない理由がここ:教育費は待ってくれない。60歳まで固定される iDeCo に入れ過ぎると、大学費用で家計が詰まる。流動性の高い新NISAを主役にした4章の配分は、この山を越えるための設計。
- 住宅ローン:低金利なら繰上げ返済より投資を優先する判断が一般的。ただし金利・残債・団信・精神的な安心感を踏まえ、家庭ごとに判断。
9途中を楽しむ設計(我慢しないFIRE)
20年を完走する鍵は、ゴールまで耐えることではなく、道中も楽しいこと。
- 楽しみ枠8万は"聖域"(2章)。相場が好調な年でも不調な年でも、家族の旅行・外食・趣味の予算は削らない。
- 配当・実現益の一部を"ご褒美"に:サテライトの高配当分などから、年1回の家族旅行を"配当で賄う"と、資産が育つほど今の暮らしも豊かになる実感が得られる。
- マイルストーンを家族で祝う:「資産1,000万」「Coast FIRE 到達」を家族イベントにすると、投資が孤独な我慢でなく共通の目標になる。
10この試算の弱点と前提
| 前提・リスク | 注意点 |
| 利回りは仮定 | 3〜7%は過去の株式の傾向に基づく仮定で、将来を保証しない。長期の低迷期に当たる可能性もある。 |
| 暴落のタイミング | 取り崩し開始直後の暴落は資産寿命に致命的(シークエンスリスク)。現金クッションで緩和する前提。 |
| 収入の変動 | 共働きの前提が崩れる(離職・病気・介護)と入金力が落ちる。だからこそ生活防衛資金と柔軟な計画が要る。 |
| 教育費・物価 | 子どもの進路(理系・私立・留学)や物価上昇で支出は上振れし得る。バッファを厚めに。 |
| 税・制度改正 | NISA・iDeCo・年金・税率は変わり得る。定期的に前提を見直す。 |
| 手取り・支出の個別性 | 2章の家計は概算。自分の実数で必ず引き直す。 |
結論の受け止め方:「50歳でCoast FIRE、55〜60歳で早期リタイア」は好条件がそろった場合の一つのシナリオ。断定ではない。だが、方向性——共働きの入金力+低コスト長期分散+制度活用なら、40歳スタートでも十分に戦える——は、幅のどこに転んでも変わらない。
11まとめ
- 40歳・共働き・貯蓄300万でも、家計から月15万の積立は現実的に作れる(楽しみ枠を残したまま)。
- 基準(5%)シナリオで、50歳・約2,400万で Coast FIRE。以降は積立をゆるめ、働き方を選べる。
- 55歳 約4,140万/60歳 約6,330万と育ち、段階的な半リタイア〜早期リタイアが射程に。65歳 約9,140万で完全リタイアは余裕。
- 鍵は「低コスト・長期・分散・自動化」と「暴落で売らない土台」、そして「途中も楽しむ設計」。共働きの2馬力が最大の安全余裕になる。
最初の一歩は完璧な計画づくりではなく、今日、新NISAで自動積立を1本設定すること。あとは続けながら整えればいい。40歳は、まだ十分に早い。