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Nepal · ABC · 79 Days Before Departure

出発前79日の準備
——予防接種・高山病薬・靴・体力

航空券も保険もガイドも決まったあとに残るのは、「準備に時間そのものが必要なもの」です。ワクチンは接種間隔があり、靴は履き慣らす日数が要り、体力は一夜漬けが効きません。これらは9月に思い出しても遅い。本記事は10/23の出発から逆算して、いつまでに何を始めるかだけを並べます。結論から言うと、今週やることは「渡航外来の予約」の一手だけです。

出発まで:79日(11.3週) 推奨受診時期をすでに超過 今週の作業:予約1本
医療情報についての前置き。本記事のワクチン・薬に関する記述は、渡航外来を予約し、医師と何を相談すべきかを整理するための下調べです。接種すべきワクチンも、その回数も、薬を飲めるかどうかも、個人の接種歴・既往・アレルギーによって変わります。最終判断は必ず医師に委ねてください。本記事は「何を聞きに行くか」のリストであって、処方や接種計画そのものではありません。

1締切は4つある

準備項目のうち、「後からでは取り返せないもの」だけを抜き出すと4つです。順番は締切の早い順。

項目実質的な締切遅れると何が起きるか
① 渡航外来の予約 今週 すべての起点。予約が取れないと接種計画が立たない。専門外来は数週間先まで埋まっていることがある
② 登山靴 8月中に購入 新品で6日間歩くと靴擦れで行程が壊れる。慣らしに9月・10月の2か月を使いたい
③ 複数回接種のワクチン 9月中旬までに初回 狂犬病は3回で最短21日、A型肝炎は2回目まで2〜4週。初回が遅れると必要回数を打ち切れない
④ 体力づくり 8月中に開始 11週間あれば意味のある期間になるが、1か月を切ると効果が出ない。特に下りの脚は一夜漬けが効かない
推奨されている受診時期は、すでに過ぎています。渡航ワクチンの一般的な案内では「出発の3か月以上前に受診」とされていますが、今日から出発まで79日=約2.6か月間に合わないわけではありません——狂犬病の3回接種は最短21日、A型肝炎の2回目は2〜4週後なので、8月中に始めれば余裕を持って収まります。ただし「来月やろう」が1回でも入ると足りなくなる位置にいる、ということです。

2まず渡航外来を予約する

ここが全部の起点なので、今週やることはこれ1つと割り切ってください。ワクチンを自分で調べて決める必要はありません。決めるのは医師で、あなたがやるのは「材料を持って行くこと」です。

予約の電話で聞くこと

初診に持っていくもの

3何を打つか、いつまでに打つか

ネパール渡航で一般に名前が挙がるのはA型肝炎・B型肝炎・破傷風・腸チフス・狂犬病・日本脳炎あたりです。ただし全部打つという話ではありません。優先順位があり、時間と費用の制約の中で医師と決めることになります。

ワクチン回数と間隔初回の目安この旅程での位置づけ
破傷風
(またはDT/Tdap)
1回(追加接種の場合)直前でも可 優先度が高い。転倒・擦り傷が想定される行程で、山中では医療機関が遠い。接種歴によって必要回数が変わるので母子手帳が効く
A型肝炎 国産(エイムゲン)は3回
0日 → 2〜4週 → 24週
9月末まで 優先度が高い。汚染された水・食品から感染する。トレイル上の食事が続く行程では実利がある
狂犬病
(曝露前接種)
3回
0日 → 7日 → 21日
(または28日)
9月中旬まで 時間に余裕があれば、とされる位置づけ。ネパールは犬が多い。打っておくと、咬まれた後の処置が簡略化される点に意味がある
腸チフス 1回(追加は3年目安)直前でも可 南アジア滞在では推奨されるとされる。ただし取り扱い施設が限られるので、予約時に確認が要る
B型肝炎 複数回—— 「時間に余裕があれば」の分類。今回の日程では完了させにくい
A型肝炎は「3回打ち切れない」ことを気にしなくて大丈夫です。国産のエイムゲンは0日・2〜4週・24週の3回接種で、3回目はどうやっても帰国後になります。ただし公表されている臨床試験の結果では、2〜4週間隔の2回接種で抗体陽転率100%(平均抗体価 約500mIU/ml)とされています。今回の渡航に必要な分は2回で作れて、3回目は帰国後に打って10年以上の持続に切り替える——という順序です。「間に合わないから諦める」ではなく「2回打って出る」のが標準的な考え方になります。
狂犬病の回数は、確認が必要です。従来は0日・7日・21〜28日の3回が標準とされてきましたが、0日・7日の2回でも数年の免疫が得られるとする見解が国際的に広がりつつあるという記述があります。どちらを採るかは医療機関の判断で、使用するワクチンの用法にも依存します。本記事では回数を断定しません。「3回なら9月中旬までに初回」を安全側の目安として持っておき、実際の回数は医師の指示に従ってください。
費用は安くありません。渡航ワクチンは原則として自費で、複数種類×複数回だと合計が数万円規模になります。金額を先に確認してから種類を決めるのが現実的で、初診の時点で「予算はこのくらい」と伝えて優先順位をつけてもらうほうが話が早い。本記事では具体的な金額を書きません——施設によって差が大きく、確認できた数字がないためです。

4高山病薬:入手と、事前に一度試すこと

装備リストには「ダイアモックス(要医師処方)」と1行あるだけなので、ここを具体化します。

項目内容
薬剤ダイアモックス(一般名:アセタゾラミド)。もともと緑内障などの薬で、高山病の予防・治療にも用いられる
作用腎臓での重炭酸イオンの再吸収を阻害して体内のpHを調整し、呼吸を促進する。結果として高所での順応を助ける
飲み方の一般的な説明高所に上がる前日から開始し、最初の数日間継続。1日125〜250mgを2回に分けるという記述が多い。実際の用量・期間は処方時の指示に従う
保険保険適用は緑内障・てんかん・メニエール病・睡眠時無呼吸症候群など。高山病予防での処方は自由診療になる
主な副作用手足のしびれ感・頻尿・味覚の変化・めまい。最大の問題は利尿作用による脱水——高所で脱水すると高山病そのものを悪化させうる
確認すべき禁忌サルファ剤アレルギーの有無。既往がある場合は必ず申告する
日本で一度、試しに飲んでおくこと。これが本章でいちばん言いたい点です。副作用の出方には個人差があり、手足のしびれや味覚の変化は「知らずに山で起きると異常を疑う」種類の症状です。標高3,700mのMBCで手がしびれ始めたとき、それが薬のせいなのか高山病なのか判断できない——という状況は避けたい。処方を受けたら、9月中に自宅で1回試す。これで、山では「知っている副作用」として扱えます。
薬は順応の代わりにはなりません。本プランはもともとMBC(3,700m)で短行程+順応散歩を入れて高度順応を改善した設計になっています(→ABC完全ガイドの行程)。ダイアモックスはその設計を補助するもので、飲んだから速く上がっていいという話ではありません。SpO₂を毎日測ってガイドと共有する運用と組み合わせて、初めて意味が出ます。

5常備薬と、日本から持っていくもの

山中に薬局はありません。ポカラを出たら、持っているものが全部です。

分類具体例この行程での用途
胃腸下痢止め・整腸剤いちばん使う可能性が高い枠。ダルバートと未知の水が6日間続く
鎮痛・解熱常用しているもの頭痛は高山病の兆候でもあるため、「薬で消した」で済ませないこと。飲んだ事実をガイドに伝える
喉・鼻のど飴・マスク高所は極端に乾燥する。咳が止まらなくなると睡眠が削られ、順応に響く
外傷絆創膏・テーピング・ワセリン靴擦れ対策。ワセリンは予防に使う。テープは指・踵に先回りで貼る
日焼けSPF50+・リップ装備リストに記載済み。雪面の照り返しは想像より強い
常用薬処方薬全日程+予備日分。飛行機の遅延を考えると、機内持込に数日分を分けて持つ
常用薬があるなら、英文のメモを1枚。薬剤名(一般名)・用量・服用理由を英語で書いた紙を保険証券のコピーと一緒に持つ。現地の医師に見せる場面と、空港で説明を求められる場面の両方で効きます。作成は渡航外来のついでに相談すると早い。

6靴:買うなら今月、慣らしの設計

装備の中で唯一、締切があるのが靴です。他のものは10月に買っても間に合いますが、靴だけは違います。

新品の靴で6日間歩くのは、行程を賭けた博打です。靴擦れは初日には出ず、2日目・3日目に出て、そこから毎日悪化します。ABCの行程はD5でMBC、D6でABC——つまりいちばん引き返しにくい場所で悪化のピークが来る並びになっています。テーピングで凌げる範囲を超えると、下山するしかありません。

慣らしの設計

爪も準備のうち。下りで爪が靴の先に当たるため、出発の数日前に切っておく。直前に深爪すると逆効果なので、1週間前くらいが目安です。D7の大下降(→7章)を考えると、ここは効きます。

7体力:下りを鍛える11週間

ABCは技術的に難しい山ではなく、「1日5〜6時間を6日続ける」持久力の勝負とされています。ただしこの行程には、一般的な説明では触れられない固有の負荷があります。

D7(10/29)の下降が、この行程の最大の負荷です。ABC(4,130m)でご来光を見てから、その日のうちにバンブー(2,310m)まで降ります。標高差 約1,820mの下降を1日で。上りは心肺が先に音を上げるので自然にペースが落ちますが、下りは心肺が楽なぶん、脚が壊れるまで歩けてしまいます。ここで大腿四頭筋を使い切ると、翌D8のジヌダンダまでが苦行になります。

11週間の組み立て

時期主眼内容
8月
(残り4週)
習慣をつくる週2〜3回の有酸素(ランニング・自転車・水泳)。まず続く形にすることが目的で、強度は要らない
9月
(4週)
脚をつくる有酸素を維持しつつ、階段・坂を入れる。週1回はザックを背負って数時間歩く日を作る。靴の慣らしと同じ日にやれば一石二鳥
10月上旬
(2週)
下りを入れるここが本題。階段を降りる・坂を下る動作を意図的に入れる。翌日の筋肉痛の出方で、自分の下りの弱さが分かる
10月中旬
(1週)
抜く量を落として回復に充てる。直前に追い込んでも間に合わないうえ、疲労を持ち込むと高度順応に不利
下りの鍛え方は上りと違います。下りで脚が痛むのは、筋肉が伸ばされながら力を出す動き(伸張性収縮)によるもので、心肺トレーニングでは鍛えられません。効くのは実際に降りる動作そのもの——階段を降りる、坂を下る、スクワットでゆっくり降ろす局面を長めに取る。週1回でも入れておくと、D7の消耗がはっきり変わります。
トレッキングポールは「装備」ではなく「脚の一部」として考える。下降で膝と大腿四頭筋の負担を逃がせます。ただし使い方に慣れが要るので、慣らし歩行のときから一緒に使ってください。現地調達も可能ですが、使い慣れていない道具をD7で初めて頼るのは順序が逆です。

8週割りカレンダー

出発 10/23(金)/トレック 10/25〜10/30 から逆算。

時期医療装備・体力
8/5〜8/9
(今週)
渡航外来を予約する。これだけ。取り扱いワクチン(とくに腸チフス)とダイアモックスの可否を電話で確認 母子手帳を探す。接種歴が分かるかどうかで初診の中身が変わる
8月中旬 初診 → 1回目接種。スケジュールを医師と確定させる 登山靴を買う。本番用の靴下も一緒に。有酸素を週2〜3回で開始
8月下旬 2回目接種(狂犬病7日目・A型肝炎2〜4週) 靴の慣らし開始。近場の低山・階段
9月上旬 狂犬病3回目(21日目) ザックを背負って歩く日を週1回
9月中旬 狂犬病を3回打つ場合の初回リミット。ダイアモックスの処方を相談 坂・階段を本格化
9月下旬 ダイアモックスを自宅で1回試す。副作用の出方を見る。A型肝炎の初回リミット 装備の不足品を洗い出す(買うか・ポカラで借りるか)
10月上旬 破傷風・腸チフスなど単回のもの。常備薬をそろえる 下りのトレーニングを入れる。靴の痛点をここで潰す
10月中旬 常用薬の英文メモ。保険証券の印刷 運動量を落とす。荷造り。爪を切る(出発1週間前)
10/23(金) 出発。成田12:00発
この表の使い方は1つだけです。今週の欄しか見ないこと。今週やるのは「渡航外来に電話する」と「母子手帳を探す」の2つで、それ以外は今考えなくていい。準備が破綻するのは、全部を一度にやろうとして何も始まらないときです。8月中旬の欄は、初診が終わってから見れば足ります。

S情報ソース

2026年8月時点。医療情報を含むため、確認できた範囲を特に厳密に区別します。本記事の作成環境からは医療機関・公的機関のページを直接開けなかった(接続が遮断され HTTP 403)ため、以下はすべて検索結果に現れた記述に基づくもので、一次確認はできていません。

  • 【最重要・方針】 本記事は処方・接種計画ではなく、渡航外来で相談するための論点整理です。必要なワクチンの種類・回数・可否、薬の適否は個人の接種歴・既往・アレルギーによって変わり、医師が判断します。本記事の記述を根拠に自己判断しないでください。
  • 【二次情報・複数一致】 ネパール渡航で名前が挙がるワクチン(A型肝炎・B型肝炎・破傷風・腸チフス・狂犬病・日本脳炎)と、「少なくとも破傷風とA型肝炎、余裕があれば狂犬病・B型肝炎」という優先順位。複数の渡航外来・医療機関の案内で同趣旨の記載が確認できました。
  • 【二次情報】 「出発の3か月以上前に受診」「複数回接種が必要な場合は出国までに少なくとも2回目までを終える」という一般的な案内。医療機関の渡航外来ページに記載があります。
  • 【二次情報・記載が割れる】 狂犬病の曝露前接種の回数。「0日・7日・21日または28日の3回」を標準とする記述が主ですが、「0日・7日の2回でも数年の免疫が得られるとする見解が国際的に広がりつつある」とする記述もあり、割れています。本記事では回数を断定していません。使用するワクチン製剤の用法にも依存するため、医療機関の判断に従ってください。
  • 【二次情報】 A型肝炎(国産エイムゲン)の0.5mLを2〜4週間隔で2回、初回から24週後に追加の計3回という用法と、2回接種後の抗体陽転率100%・平均抗体価約500mIU/ml、6か月後に約200mIU/mlへ低下、3回目で約3,000mIU/mlに上昇し5年後も約400mIU/mlを保持という臨床試験の記述。複数の医療機関ページに同趣旨の記載があります。
  • 【二次情報】 腸チフスワクチン(ViCPS・注射)は1回接種・追加は3年目安、南アジア滞在で推奨されるという記述。国内での取り扱い施設が限られる点も複数の記載から。
  • 【二次情報・複数一致】 ダイアモックス(アセタゾラミド)——作用機序(腎臓での重炭酸イオン再吸収の阻害によるpH調整と呼吸促進)、高所へ上がる前日から開始し数日継続、1日125〜250mgを2回に分けるという用法の記述、保険適用は緑内障・てんかん・メニエール病・睡眠時無呼吸症候群等で、高山病予防は自由診療、副作用(しびれ感・頻尿・味覚変化・めまい、利尿による脱水)。複数の医療機関・山岳医療系サイトで同趣旨の記載を確認しました。用量は必ず処方時の指示に従ってください。
  • 【一般的な記述】 ABCの難易度(1日5〜6時間・中級・EBCより易しいとされる)と、事前トレーニングとして有酸素運動・階段昇降・ザックを背負った歩行が挙げられること。現地代理店の案内に共通して見られる記述です。
  • 【本サイト内で確定済み・計算】 D7のABC(4,130m)→バンブー(2,310m)=標高差約1,820mの下降は、確定した行程表からの計算です。日程(10/23出発・10/25〜10/30トレック・11/5帰国)も発券済みの航空券に基づきます。下りが伸張性収縮による負荷であること、心肺トレーニングでは代替できないことは運動生理の一般的な知見です。

H更新履歴

日付内容
2026-08-05初版公開。既存のアンナプルナ関連記事に予防接種と体力づくりの記載が1件も無く、高山病薬も装備リストに名前があるだけだったため、「準備に時間そのものが必要な項目」だけを集めて新規作成した。出発(10/23)まで79日という時間軸から逆算し、締切のある4項目(渡航外来の予約・登山靴・複数回接種のワクチン・体力づくり)を特定。渡航ワクチンの一般的な推奨受診時期(出発3か月以上前)をすでに超過していることを明記したうえで、狂犬病3回接種(最短21日)とA型肝炎2回目(2〜4週)の所要から8月中に開始すれば収まることを示した。A型肝炎は3回目が構造的に帰国後になるが2回接種で抗体陽転率100%という臨床試験の記述があるため「2回打って出る」が標準である旨を補足。ダイアモックスは自由診療である点・サルファ剤アレルギーの確認・日本で一度試しておくべき理由を具体化した。体力はD7の標高差約1,820mの下降を最大の負荷として特定し、下り(伸張性収縮)は心肺トレーニングでは鍛えられない点を軸に11週間の配分を組んだ。医療情報は作成環境から一次ソースを1件も開けなかったため、二次情報であることと記載が割れる箇所(狂犬病の回数)を情報ソース欄に明記した。

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