情報処理安全確保支援士(登録セキスペ/SC)は、午前I(科目A-1)を免除できれば勝負は実質「午前II」と「午後」の2科目に絞られます。そして合否を分けるのは、記述式の午後(科目B)です。この記事は3ヶ月の学習を前提に、出題範囲・学習ロードマップ・午前II対策を整理したうえで、午後の過去問をテーマ別頻出度・設問タイプ・解答技術まで踏み込んで分析します。
まず土台を正確に。2026年度(令和8年度)から大きな運用変更があるため、古い情報のまま準備すると足をすくわれます。
| 科目(新/旧) | 形式 | 出題/解答 | 時間 | 合格基準 |
|---|---|---|---|---|
| 科目A-1(午前I) | 多肢選択(四択) | 30問/30問 | 50分 | 100点満点・60点以上 / 本記事は免除前提 |
| 科目A-2(午前II) | 多肢選択(四択) | 25問/25問 | 40分 | 100点満点・60点以上 |
| 科目B(午後) | 記述式 | 4問出題/2問選択 | 150分 | 各50点・計100点/60点以上 |
午前II(科目A-2)と午後(科目B)は同じ知識領域を、「選べる知識」か「使える知識」かという違う深さで問う。範囲の骨格は共通なので、まず全体像を押さえる。
| 領域 | 主な内容(午前II=知識/午後=応用の両面で問われる) |
|---|---|
| 情報セキュリティ基礎 | 機密性・完全性・可用性、リスクマネジメント、脅威と脆弱性、CVSS、セキュリティポリシー |
| 暗号・認証 | 共通鍵/公開鍵暗号、ハッシュ、ディジタル署名、PKI・電子証明書、TLS、多要素認証、OAuth・SAML・OpenID Connect |
| ネットワークセキュリティ | ファイアウォール、プロキシ、IDS/IPS、VPN(IPsec・TLS)、境界防御とゼロトラスト、セグメンテーション |
| Webアプリケーション | XSS、SQLインジェクション、CSRF、セッション管理、クリックジャッキング、WAF、セキュアコーディング |
| メール・DNS | SPF・DKIM・DMARC、DNSSEC、なりすまし・フィッシング、S/MIME、標的型メール |
| マルウェア・攻撃手法 | 標的型攻撃、ランサムウェア、C2通信、サプライチェーン攻撃、ラテラルムーブメント、MITRE ATT&CK的な攻撃連鎖 |
| インシデント対応・運用 | CSIRT、ログ管理・SIEM、フォレンジック、脆弱性管理・パッチ運用、資産管理、アクセス制御(AD含む) |
| クラウド・開発 | IaaS/PaaS/SaaSの責任共有、コンテナ、DevSecOps、IDaaS、クラウド設定不備 |
| 法制度・管理 | 個人情報保護法、不正アクセス禁止法、各種ガイドライン、ISMS、監査、委託先管理 |
| 時期 | やること | 到達目標 |
|---|---|---|
| 1ヶ月目 基礎固め | 定番テキスト(「専門知識+午後問題の重点対策」等)で全領域を1周。午後で問われる技術の“仕組み”を理解に寄せてインプット(暗記より「なぜそうなるか」)。並行して午前IIの過去問を分野別に開始 | 用語と攻撃/対策の対応関係が説明できる。午前II 正答6割 |
| 2ヶ月目 午後に着手 | 午後の過去問演習を開始。最初は「解く」より解説を精読し、模範解答の言い回しを写経。分野を絞って(Web→ネットワーク→メール/DNS→インシデント…)縦に潰す。午前IIは反復継続 | 午後1問を時間度外視で完答できる。午前II 正答7〜8割 |
| 3ヶ月目 実戦・仕上げ | 本番形式(4問から2問選択・150分)で通し演習を回数重視で。時間配分と問題選択の訓練。間違いノートで弱点補強。午前IIは直近回を総仕上げ | 午後2問を150分で最後まで書き切れる。午前II 安定8割超 |
ここが本記事の主眼。午後は「4問出題・2問選択・各50点・150分・記述式」。長文のシナリオ(システム構成図+インシデントや設計変更の物語)を読み、下線部の説明・空欄補充・対策や理由の記述で答える。暗記した用語をそのまま書く問題はほぼ無く、シナリオに即して応用できるかが問われる。
過去問を通観すると、出題テーマは概ね次の領域に収束する。頻出度は年度でぶれるため傾向の目安として捉え、S・Aランクを軸に、自分の得意で2問を確実に取れる形を作るのが戦略。
| テーマ | 頻出度 | 典型的な問われ方(設問の型) |
|---|---|---|
| Webアプリ脆弱性 | S | XSS/SQLi/CSRFの成立条件と対策、脆弱なコードの指摘、セッション管理不備、WAFで防げる/防げない攻撃の切り分け |
| ネットワーク構成と境界防御 | S | 構成図を読み通信経路・許可すべき通信を特定、FW/プロキシ設定、セグメント分離、TLS通信の中身、なぜその経路で攻撃が通るか |
| 認証・認可 | A | 多要素認証の導入効果、証明書の検証、OAuth/SAMLのトークン・フロー、パスワードリスト攻撃への対策 |
| メール・DNSセキュリティ | A | SPF/DKIM/DMARCの判定の仕組みとなりすまし防止、標的型メールの見分け、DNS応答の悪用 |
| マルウェア・標的型/ランサム | A | 攻撃連鎖(侵入→横展開→窃取)の各段階の説明、C2通信の検知、被害範囲の特定、ラテラルムーブメント対策 |
| インシデント対応・ログ/フォレンジック | A | ログのどの項目から何が読めるか、初動対応の順序、封じ込め・根絶・復旧、CSIRTの役割、証拠保全 |
| 暗号・PKI・TLS | B | 鍵管理、証明書チェーンの検証、TLSのバージョン/暗号スイート選定、ハッシュと改ざん検知 |
| クラウド・セキュア開発 | B | 責任共有モデル、設定不備(公開バケット等)、CI/CDへのセキュリティ組込み、権限の最小化 |
| アクセス制御・AD/内部不正 | B | 権限設計、特権管理、Active Directoryを狙う攻撃、内部不正の検知と抑止 |
頻出度Sの2テーマ——Webアプリ脆弱性とネットワーク構成・境界防御——は、ほぼ毎回どこかの設問で絡む。ここは「用語を知っている」では足りず、成立条件・対策・記述で使う言い回しまでセットで固めておくと、本番で手が止まらない。以下は過去問で繰り返し問われた核心に、周辺の必須知識(α)を足して整理したもの。
| 脆弱性 | 成立条件(なぜ起きる) | 本命の対策と記述キーワード |
|---|---|---|
| XSS (クロスサイトスクリプティング=利用者のブラウザ上で攻撃者のスクリプトを実行させる攻撃。反射/格納/DOM の型がある) | 利用者入力をエスケープ(特殊文字を無害な文字に変換すること)せずHTMLとして出力してしまう。格納型はDB等に保存され後から他の利用者に発火、DOM型(HTMLをプログラムから操作する仕組み)はJavaScriptが画面に書き込む | 出力時のエスケープ(出す場所=HTML本文/属性/JavaScript/URL ごとに変換)を核に。付随してContent-Security-Policy(ブラウザに読み込ませてよいスクリプトの範囲を指示する仕組み)、CookieのHttpOnly(JavaScriptからCookieを読めなくする設定)でCookieの盗み取りを防ぐ。解答で書くなら「入力値を、出力する場所(HTML本文・タグの属性・JavaScript・URL)に合わせてエスケープし、スクリプトとして実行されないようにする」 |
| SQLインジェクション (入力欄からデータベース操作の命令を注入する攻撃) | 入力値を文字列としてそのままSQL(DB操作命令)に連結するため、入力が命令の一部として解釈されてしまう | プレースホルダ(値を入れる場所を先に用意し、入力を後から安全に差し込む仕組み。バインド機構ともいう)が本命。エスケープは次善。解答で書くなら「プレースホルダを使い、入力値をSQLの命令の一部としてではなく、ただのデータとして扱う」。被害:情報漏えい・改ざん・認証回避(ログインのすり抜け) |
| CSRF (クロスサイトリクエストフォージェリ=ログイン中の利用者に気づかせず不正な操作を実行させる攻撃) | ログイン状態のCookie(サーバが発行する会員証のような小さなデータ)が自動で送られる性質を悪用し、利用者に意図しない要求を送らせる | CSRFトークン(正規画面でしか受け取れない使い捨ての合言葉。サーバ側で照合)が本命。補助にSameSite属性(別サイト起点のCookie送信を制限)、Refererチェック(要求元ページの確認)、重要操作前の再認証。解答で書くなら「正規の画面でしか受け取れないトークンをリクエストに含めさせ、サーバ側で突き合わせて確認する」 |
| セッション管理不備 (ログイン状態を識別するIDの扱いの弱さ) | セッションID固定化(Session Fixation=攻撃者が用意したIDを使わせる手口)、推測できてしまうID、ログイン後にIDを作り直さない | ログイン成功時にセッションIDを作り直す(再生成)、十分に長い乱数、CookieにSecure(HTTPS通信でのみ送る)/HttpOnly/SameSite。無操作での時間切れ(タイムアウト)とログアウトで確実に破棄 |
| ディレクトリトラバーサル/アップロード ( ../等でサーバ内の想定外ファイルに到達する攻撃) | ファイル名に../(一つ上の階層へ戻る指定)を含め非公開ファイルへ到達/実行できるファイルを置かれる | パスの正規化(表記の揺れを一本化)と許可リスト、拡張子・MIME検証(ファイルの種類を中身で確認)、実行権限を与えない保存先。解答で書くなら「ファイル名をチェックし、公開していない決まったフォルダにだけ保存する」 |
| クリックジャッキング (透明な画面を重ねて誤クリックを誘う攻撃) | 透明なiframe(別ページを枠内に埋め込む仕組み)で正規画面を重ね、クリックを乗っ取る | X-Frame-Options: DENY/SAMEORIGIN(自サイトを他サイトの枠に埋め込ませない設定)、または CSP の frame-ancestors |
Secure=HTTPS(暗号化通信)でのみ送信/HttpOnly=JavaScriptから読めなくしてXSSでのCookieの盗み取りを防ぐ/SameSite=別サイトを起点とする送信を制限してCSRFを緩和。この3つは「どの攻撃に効くか」まで即答できるように。この設問は与えられたシステム構成図とファイアウォール(通信の可否を判断する関所)のルール表を読み解き、「どの通信が許可されているか/どこから攻撃が到達するか」を特定させるのが定番。覚えるべきは用語より読み解きの手順と、各機器が何を検査するか。
| 機器・概念 | 役割(何を見て何を制御するか) | 設問での問われ方 |
|---|---|---|
| ファイアウォール(FW=通信の可否を判断する関所) | 送信元/宛先のIPアドレス・ポート番号(サービスの窓口番号)で通信を許可/遮断(L3/L4=IPやポートを扱う通信の層)。ステートフルインスペクション(行きの通信を覚えて、その戻りだけ通す方式)で戻り通信を許可 | ルール表の穴(過剰な許可・any=すべて許可)を指摘、攻撃が通る経路の特定、必要最小限の許可への修正 |
| プロキシ(通信を代理・中継する装置。フォワード/リバース) | フォワード=内部→外部の出口をまとめURLフィルタ・ログ取得。リバース=外部→内部の公開サーバの前段でLB(ロードバランサ=負荷分散装置)・TLS終端(暗号を一旦解いて中身を検査) | C2通信(乗っ取った端末へ指令を送る通信)やマルウェアのダウンロードをどこで検知/遮断できるか、ログの活用 |
| DMZ(外部公開用に隔離したネットワーク区画)とセグメント分離 | 公開サーバをDMZに隔離し、DMZ→内部LANの通信を制限。侵入時の横展開(ラテラルムーブメント=侵入後に別の端末へ被害を広げること)を封じ込める | 「なぜサーバを分けるか」、侵害時の影響範囲、内部の区画(セグメント)間で本当に必要な通信の設計 |
| IDS/IPS(侵入検知/侵入防御システム) | シグネチャ(既知攻撃のパターン)や振る舞いで攻撃を検知(IDS)・遮断(IPS)。通信の中身まで見る(L7=アプリのデータを扱う層に寄る) | FWで防げない攻撃をどこで捕まえるか、誤検知/検知漏れの扱い |
| TLS通信(通信の暗号化。旧SSL)と可視化 | 暗号化で盗聴・改ざんを防ぐ一方、中身が見えないため検査をすり抜けられる。TLS終端(暗号を解く地点を設ける)で中身を可視化 | 「暗号化通信のためFW/IDSで中身を検知できない」理由、暗号を解く位置の設計、証明書の扱い |
| 踏み台・VPN・リモート保守 (踏み台=攻撃の中継に使われる乗っ取り端末、VPN=暗号化した仮想的な専用線) | 外部保守やVPNの入口が侵入経路になりやすい。多要素認証・接続元の制限・ログ取得で守る | 保守用アカウント/経路の悪用、なぜMFA(多要素認証=パスワード+αで本人確認)や接続元制限が要るか |
本文の文脈から技術用語や設定値を埋める。ここは知識で確実に取る失点厳禁ゾーン。前後の文と技術的整合が取れる語を選ぶ。迷ったら本文中に定義や言い換えが必ずあるので、本文に根拠を探す。
最頻タイプ。「主語+動作+対象+結果」を1文で。字数制限(30〜50字が多い)は「入れるべき要素の数」のヒント。減点されるのは「用語だけ書いて動作を書かない」「一般論で本文の固有名詞・条件に触れない」パターン。採点は要素点なので、キーワードを落とさないことが最優先。
「なぜこの攻撃が通るのか」「その対策で何を防げるのか」を因果で書く。攻撃側=前提条件+悪用される仕組み、対策側=何を遮断/検証するかをセットで。対策は「本文のこの設定・構成に対して有効」とシナリオに紐づけると点が伸びる。
インシデント対応(検知→初動→封じ込め→根絶→復旧→再発防止)や証明書検証の順序など。定石の型を暗記しておき、本文の状況に当てはめる。
| フェーズ | 目安時間 | やること |
|---|---|---|
| 問題選択 | 〜8分 | 4問を俯瞰し2問決定 |
| 1問目 | 約65分 | 本文精読→設問→根拠を本文に探して記述 |
| 2問目 | 約65分 | 同上 |
| 見直し | 〜12分 | 空欄・字数・主語述語・誤字を確認 |
試験制度は移行期にあり、CBT化の運用細目・免除条件・日程(本記事は2026年7月時点)は変更され得ます。出願前に必ずIPA公式の最新情報をご確認ください。