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⚠ これはサンプル(記載例)です。 実在の組織・システム・インシデントとは一切関係のない架空の事例です。公開用に作成しており、固有名・IPアドレス・ホスト名・脆弱性の具体的悪用手順などの機微情報は意図的に含めていません。実際の監査報告書は社外秘として厳重に管理してください。
Sample · Internal Security Audit Report

情報セキュリティ内部監査 報告書
(サンプル・架空事例/初回監査・統制未成熟の想定)

本書は「内部情報セキュリティ監査ガイド」に基づいて実施した初回監査の報告書の記載例である。想定は「これまで内部監査を実施したことがなく、内部統制がほとんど有効に機能しておらず、不備が多数存在する状態」。実際の報告書がどの程度の粒度・トーンになるかを示す見本として用いる。

文書番号(例)ISA-2026-001(初回)
被監査組織△△サービス株式会社 情報システム部(架空
監査の種類情報セキュリティ内部監査(初回・全体)
監査基準自社情報セキュリティ規程(策定直後)、経済産業省 情報セキュリティ管理基準、CISA CPG 2.0/NIST CSF 2.0(到達度の物差し)
監査実施日2026年10月上旬(実働10日)
監査人情報処理安全確保支援士 有資格者 1名(情報システム運用に従事しない者)
報告先代表取締役、情報セキュリティ担当役員(CISO)
取扱区分(実物は)社外秘 / 本サンプルは公開用に匿名化

1監査総括(エグゼクティブサマリ)

D
総合評価:D(重大な是正を要する)
5段階(A:良好/B:概ね良好/C:部分的/D:重大な是正を要する/E:機能していない)のうち D。初回監査として、統制の設計・運用の両面で広範な不備が確認された。
7
重大な不備
14
要改善事項
9
観察事項
3
良好事例

本監査は当社にとって初めての情報セキュリティ内部監査である。全11ドメイン(A〜K)を対象に、書面確認・関係者インタビュー・限定的な実測テスト・既存ツール出力の再評価を行った。結果として、侵害または事業停止に直結し得る「重大な不備」を7件確認した。とりわけ次の3点は、現状で標的型攻撃・ランサムウェアを受けた場合に被害を限定できない蓋然性が高く、他の改善に優先して即時対応すべきと判断する。

一方で、直近に情報セキュリティ規程を整備し、本監査を自発的に受け入れた姿勢は評価できる(→ 7章)。不備の多さは「これまで着手していなかった」ことの反映であり、担当者3名の努力不足ではない。本報告は責任追及ではなく、資源配分(人・予算)の経営判断を促すことを目的とする(→ 8章)。

2監査の目的・範囲・手続き

2-1. 目的

2-2. 範囲

本社および主要サーバー環境(オンプレミス Active Directory を中核とするサーバー/クライアント構成、インターネット出口の Proxy・Firewall、リモートアクセス VPN)。公開Web・メールは外部サービスを利用しており、社内非保持であることを確認範囲に含めた。監査ガイドの11ドメイン(A ガバナンス〜K 物理)を対象とする。

2-3. 手続き

手続き本監査での実施内容
書面・証跡の閲覧規程・台帳・機器設定エクスポート・会議記録・委託契約書を確認
インタビュー情報システム部3名、利用部門2名、担当役員に実施
実測・再実施(限定)検証端末からの Proxy 迂回試行、サンプル端末1台の設定確認、退職者アカウントの突合等
ツール出力の再評価提出されたウイルス対策製品の管理画面、外部からのポートスキャン結果を監査目線で確認(注:AD 健全性診断・脆弱性スキャンは未導入のため実施不可)
本監査は本番環境への操作を行わず、実測は運用者の操作に監査人が立ち会う方式で実施した。疑似攻撃による侵入テスト(ペネトレーションテスト)は範囲外とし、必要性は所見として記載した(→ 所見 F-02)。

3総合意見と成熟度評価

CISA CPG 2.0/NIST CSF 2.0 の6機能を物差しに、現状の成熟度を4段階(未整備/部分的/概ね整備/有効に運用)で評価した。初回のため多くが下位に位置する。

機能成熟度要約
統治(Govern)部分的規程は策定直後だが運用実績がなく、経営報告・役割分担が未確立
識別(Identify)未整備資産台帳が最新でなく、脆弱性管理・KEV 対応の仕組みがない
防御(Protect)未整備〜部分的MFA 不在・特権分離なし・全員ローカル管理者など基礎統制の欠落が多い
検知(Detect)未整備EDR 未導入、ログは分散し保存期間も不明、監視体制なし
対応(Respond)未整備インシデント対応手順・連絡先一覧・演習がいずれも未整備
復旧(Recover)未整備バックアップが本番依存、復旧演習・RTO 定義なし

総合意見:当社の情報セキュリティ統制は、現時点で「有効に機能している」とは言えない。特に「防御・検知・対応・復旧」の中核が未整備であり、インシデント発生時に被害の限定・早期復旧が困難である。ただしこれは初回監査で顕在化した当然の結果であり、後述のロードマップに沿って優先度順に着手すれば、1年で D → C、2年で C → B への改善は現実的である。

4重大な不備(7件)— 30日以内の是正または代替統制を要する

侵害・事業停止に直結し得る統制の欠落。是正または暫定の代替統制と、経営層への状況報告を30日以内に求める。ドメイン記号は監査ガイドのチェックリストに対応。

重大C-01VPN に多要素認証がないDomain B(境界)
状況
リモートアクセス VPN が ID・パスワードのみで認証されており、全利用者に多要素認証(MFA)が設定されていない。ベンダー保守用アカウントも同様。
リスク
資格情報の漏えい・使い回し・推測により、社外から誰でも社内ネットワークへ到達し得る。近年の侵害の主要な初期侵入経路である。
根拠
VPN 利用者一覧に MFA 登録項目が存在せず、インタビューでも未導入を確認。
推奨対応
全 VPN 利用者に MFA を即時適用(例外ゼロ)。当面はサービス提供元の標準機能で実現可能。
期限/担当
30日以内 / 情報システム部
重大G-01バックアップが本番系に依存し、ランサムウェアで同時被害を受け得るDomain G(復旧)
状況
バックアップサーバーが本番と同一ドメインに参加し、同一ネットワーク上に配置。ドメイン管理者権限で削除可能。イミュータブル(変更不可)またはオフラインの世代が存在しない。復旧演習は未実施。
リスク
ランサムウェア被害時、本番と同時にバックアップも暗号化・削除される可能性が高い。最後の砦が機能せず、事業停止が長期化する。
根拠
バックアップ構成図の確認、および管理画面上でイミュータブル設定が無効であることを立会い確認。
推奨対応
①削除不能な世代(イミュータブル)またはオフライン保管を確保 ②バックアップ基盤をドメインから独立させる ③AD+基幹1式の復旧演習を実施し RTO を測定。
期限/担当
①は30日以内 / ②③は90日以内 / 情報システム部
重大C-02Domain Admins の常用・過剰付与Domain C(AD・特権)
状況
Domain Admins に9アカウントが所属し、うち複数が日常業務・クライアント端末へのログオンに常用されている。日常用と管理用の分離、管理専用端末が存在しない。
リスク
管理者権限の資格情報が一般端末に残留し、1台の侵害からドメイン全体の掌握(横移動→AD 掌握)に直結しやすい。
根拠
Domain Admins メンバー一覧の出力、利用実態のインタビュー。
推奨対応
DA を2〜3に削減、日常用アカウントと完全分離、DA のクライアントへのログオンを GPO で禁止、管理専用端末を用意。
期限/担当
60日以内(削減・分離は30日以内着手)/ 情報システム部
重大D-01EDR 未導入・全利用者がローカル管理者権限を保持Domain D(エンドポイント)
状況
端末・サーバーに EDR(不審挙動の検知・対処の仕組み)が導入されておらず、旧来型のウイルス対策のみ。加えて全利用者が自端末のローカル管理者権限を保持。監視体制(自社 SOC/外部 MDR)もない。
リスク
マルウェアの実行・拡散を制限できず、感染しても検知・隔離ができない。深夜帯の被害進行に気付けない。
根拠
資産台帳とインタビュー、サンプル端末1台での権限確認。
推奨対応
EDR を全端末・全サーバーへ導入し、24時間監視は外部 MDR に委託(3名体制のため内製 SOC は非推奨)。あわせて標準ユーザー化を推進。
期限/担当
導入計画を30日以内に策定、90日以内に展開開始 / 情報システム部・経営
重大I-01インシデント対応手順・連絡先が未整備Domain I(インシデント対応)
状況
インシデント発生時の初動手順、社内エスカレーション基準、外部連絡先一覧(所管当局・JPCERT/CC・警察・IR 専門ベンダー・保険)が整備されていない。机上演習も未実施。
リスク
実際の事故時に初動が遅れ、被害拡大・報告義務違反・信頼失墜を招く。連絡先を事後に探すことで初動が数日遅れる。
根拠
文書の不存在、担当者インタビューで初動手順を即答できなかった。
推奨対応
初動フロー(紙1枚)と外部連絡先一覧を整備。IR 専門ベンダーの緊急連絡先またはリテイナー契約を確保。年1回の机上演習を計画。
期限/担当
60日以内 / 情報システム部・総務
重大H-01退職・異動者アカウントが無効化されず残存Domain H(アカウント衛生)
状況
直近1年の退職者5名を抽出し突合したところ、3名分の AD アカウントが有効なまま残存。うち1名は VPN 接続権も保持。無効化の申請・実行フローが人事と連携していない。
リスク
退職者・第三者による不正アクセスの温床。棚卸し不在により、いわゆる「孤児アカウント」が蓄積している。
根拠
人事の退職者リストと AD/VPN アカウントの突合(サンプル5件中3件不備)。
推奨対応
退職・異動時の即日無効化フローを人事と直結。全アカウントの棚卸しを実施し孤児アカウントを整理。以後は月次棚卸し。
期限/担当
棚卸しは30日以内、フロー整備は60日以内 / 情報システム部・人事
重大B-01境界機器の緊急パッチ運用がなく、長期未適用Domain B(境界)
状況
Firewall・VPN 機器のセキュリティパッチについて、ベンダー advisory の購読・緊急適用の運用がない。直近1年で公表された重要な更新のうち複数が未適用のまま。
リスク
境界機器の脆弱性は公表後まもなく悪用され、認証を経ずに侵入される。近年の重大侵害の主要因のひとつ。
根拠
機器のファーム版数と公開 advisory の突合、パッチ適用記録の不存在。
推奨対応
ベンダー advisory と JPCERT/CC 注意喚起を購読。「緊急」は72時間以内適用を目標とする体制と、臨時メンテの事前承認を整備。まず未適用分を計画的に適用。
期限/担当
未適用分は30日以内、運用体制は60日以内 / 情報システム部

5要改善事項(14件のうち代表例を抜粋)

統制はあるが形骸化・不完全、または未整備だが緊急度は重大の次に位置するもの。原則として次回監査までに是正(期限・担当を合意)。全件は付録の一覧表に記載。

所見ドメイン要旨と推奨対応
A-01ガバナンス規程は策定済みだが手順書・運用実績がない。経営報告の定例化と役割分担・代替要員の明確化を推奨。
A-02ガバナンス全社セキュリティ教育・標的型メール訓練が未実施。年1回の教育と報告率を指標とした訓練を推奨。
B-02境界アウトバウンド通信が既定許可で、Proxy を経由しない直接通信が可能。出口の既定拒否+Proxy 強制を推奨。
B-03境界FW ルールの棚卸しが行われず、用途不明・期限切れルールが残存。半期ごとの棚卸しとオーナー明記を推奨。
C-03AD・特権ローカル管理者パスワードが全台共通の可能性。Windows LAPS による個別化を推奨。
E-01内部NWネットワークが分割されておらず、クライアント・サーバーが同一セグメント。最低限のセグメント分割と管理プロトコル制限を推奨。
F-01ログログが各機器に分散し保存期間も不定。重要ログ(AD/Proxy/FW/VPN/DNS)の集約と1年保存を推奨。
H-02脆弱性脆弱性スキャン・KEV 対応の仕組みがない。月次スキャンと対応期限の設定を推奨。
H-03メール自社ドメインの DMARC が未設定(none 相当)。なりすまし対策として quarantine 以上への移行を推奨。
J-01外部委託保守ベンダーのリモート接続が常時接続かつ共有アカウント。個別ID+MFA+利用時有効化+操作ログを推奨。

6観察事項(9件のうち抜粋)

現時点で不備ではないが、放置するとリスク化する事項・将来への提言。対応は任意だが、翌年の重点テーマ候補とする。

7良好事例・評価できる点

統制の成熟度は低いが、改善の土台となる良い点も確認された。運用担当者の士気維持のためにも明記する。

8根本原因の分析

個々の不備は多岐にわたるが、根本原因は概ね次の3点に集約される。これらは現場3名の努力で解決できる範囲を超えており、経営レベルの対応を要する。

  1. これまでセキュリティに計画的に着手してこなかった:責任者の不在と、投資判断の場(経営報告)の不在により、対策が後回しにされてきた。多数の不備は「怠慢」ではなく「未着手」の結果である。
  2. 人的リソースの不足:情報システム部3名がインフラ・ネットワークと兼任しており、日常運用で手一杯。24時間監視や専門的な設計に割く余力がない。→ EDR 監視等は外部委託(MDR)で補うのが現実的。
  3. 統制を回す仕組み(PDCA)の不在:規程はできたが、棚卸し・教育・演習・報告といった「定期的に回す運用」が未定着。本監査を起点に年次サイクルを確立することが最大の改善になる。

9改善ロードマップ(提言)

全不備の同時是正は非現実的。効果と緊急度で優先順位を付け、段階的な是正を提言する。詳細な実装は「ネットワークセキュリティ実践ガイド」を参照。

時期対応(優先順)
〜30日
(重大の応急)
VPN 全員 MFA(C-01)/退職者アカウント棚卸し(H-01)/境界機器の未適用パッチ適用(B-01)/バックアップのイミュータブル化またはオフライン確保(G-01 応急)
〜90日
(重大の恒久化)
Domain Admins 削減・分離・管理端末(C-02)/EDR+MDR 導入計画と展開開始(D-01)/初動フローと外部連絡先・IR リテイナー(I-01)/バックアップ独立化と復旧演習(G-01)/LAPS(C-03)
〜1年
(基礎統制の確立)
出口既定拒否+Proxy 強制(B-02)/FW ルール棚卸し(B-03)/セグメント分割(E-01)/ログ集約・1年保存(F-01)/脆弱性・KEV 対応の仕組み(H-02)/DMARC(H-03)/委託先アクセス統制(J-01)/全社教育・訓練(A-02)/年次サイクル(棚卸し・演習・経営報告)の確立
2年目〜
(高度化)
AD 健全性の四半期診断(O-03)/ASM(O-02)/サーバーのアプリ制御/外部脆弱性診断・ペネトレーションテストの実施。次回監査で D→C→B への改善を確認
経営層への要請:本ロードマップの実行には、EDR/MDR・バックアップ改修等の投資と、兼任3名の工数確保(一時的な増員・外部委託を含む)が不可欠である。是正の可否は現場ではなく資源配分の経営判断に依存する。

10監査の限界事項

11付録:所見一覧表

所見IDドメイン区分件名期限目安
C-01B 境界重大VPN に MFA がない30日
G-01G 復旧重大バックアップが本番依存・演習未実施30〜90日
C-02C AD重大Domain Admins の常用・過剰付与60日
D-01D 端末重大EDR 未導入・全員ローカル管理者90日
I-01I 対応重大インシデント対応・連絡先未整備60日
H-01H 衛生重大退職者アカウントの残存30〜60日
B-01B 境界重大境界機器の緊急パッチ運用なし30〜60日
A-01A 統治要改善規程の運用・経営報告が未確立次回まで
A-02A 統治要改善教育・訓練の未実施次回まで
B-02B 境界要改善出口既定許可・Proxy 迂回可能次回まで
B-03B 境界要改善FW ルール棚卸し不在次回まで
C-03C AD要改善ローカル管理者パスワード共通の疑い次回まで
E-01E 内部NW要改善ネットワーク未分割(フラット)次回まで
F-01F ログ要改善ログ分散・保存期間不定次回まで
H-02H 脆弱性要改善脆弱性・KEV 対応の仕組みなし次回まで
H-03H メール要改善DMARC 未設定次回まで
J-01J 委託要改善保守ベンダーの常時接続・共有ID次回まで
O-01〜09各所観察資産台帳自動化・ASM・AD診断・復旧優先順位 ほか(本文6章参照)任意

※ 要改善14件・観察9件のうち、本サンプルでは代表例を掲載。実際の報告書では全件を個票で記載する。件数・内容はすべて架空の設定値である。

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