トレイルに入るとATMも両替所も無く、持っている現金が全部になります。そして山の物価には明快な法則がひとつあって、高度が上がるほど、すべてが高くなる。荷物を背負って運び上げているからです。この記事は、6日間で何にいくら掛かるのかを積み上げて、ポカラで下ろすべき金額を検算します。あわせて、毎日効くのに準備を忘れがちな水の作り方を扱います。
| 決めること | 結論 | 理由 |
|---|---|---|
| ① 水をどう作るか | 浄水手段を持ち、買わずに済む設計にする | 1日3L×6日を買うとUSD 18〜54。加えてそもそも売っていない場所がある(→4章)。浄水タブレットなら数百円で全日程が賄える |
| ② 現金をいくら持つか | ポカラで NPR 50,000前後を用意する | 山中にATMは無い。足りなくなっても補給できないので、余らせる前提で持つ。余りは下山後に使える |
残りは現場で判断できます。この2つだけは、山に入る前に決めておかないと取り返しがつきません。
山の物価には一貫した法則があります。すべての物資が人の背中かロバで運び上げられているので、標高がそのまま輸送コストになる。これを知っていると、支出の見積もりが正確になります。
| 品目 | 低所(ガンドルン・チョムロン等) | 高所(デウラリ・MBC・ABC) |
|---|---|---|
| 部屋(1泊) | USD 5〜10 | USD 10〜15 |
| ダルバート | NPR 450前後(ガンドルン) | NPR 700〜800(ドバンで既にこの水準) |
| 水(1L) | ペットボトル NPR 100〜150 | NPR 300〜500 |
| 充電(1回) | USD 2〜5(高度で上がる) | |
| シャワー | USD 3〜5 | |
| Wi-Fi(1日) | USD 2〜5 | |
高所では意識して水を飲む必要があります——脱水は高山病を悪化させ、ダイアモックスを飲むなら利尿作用でさらに水が要ります。1日2〜3Lは飲む前提で考えてください。それをどうやって安全な水にするかが本章です。
| 方法 | 効くもの | 弱点 | この行程での評価 |
|---|---|---|---|
| 塩素系タブレット (二酸化塩素等) |
細菌・ウイルス・原虫 | 効くまで時間がかかる。味が付く | ◎ 本命。安い・軽い・電池不要・壊れない。寒さでも故障しないのが最大の利点 |
| UV殺菌器 (SteriPen等) |
細菌・ウイルス・原虫 | 電池が要る(寒さで消耗)。濁った水では効果が落ちる | △ 単独では不安。90秒で済む速さは魅力だが、電池切れ=水が作れない。予備電池必須 |
| フィルター (Sawyer・Katadyn等) |
細菌・原虫 ウイルスは単独では除去できない |
凍ると壊れることがある | ○ 併用向き。味が良くなるのが利点。タブレットと組み合わせる使い方が現実的 |
| ロッジで煮沸湯を買う | —— | 1L あたり USD 1〜3 | ○ 保険として。器具が壊れたとき用。全部これにすると6日で数十ドル |
これは費用ではなく規制の話です。アンナプルナ地域ではプラスチックごみの削減が進められており、「多くの場所でペットボトル入りの水を物理的に買えない」という記述があります。代わりに安全な飲料水の給水ステーションが主要な休憩地点に置かれている、という運用です。
ロッジでは部屋以外がほぼすべて有料です。ここは「払うか、我慢するか、装備で回避するか」の判断になります。
| 項目 | 料金 | 判断 |
|---|---|---|
| 充電 | 1デバイス USD 2〜5 | 装備で回避する。大容量モバイルバッテリーを持てば6日間ほぼ不要。寒さで持ちが落ちる前提で容量を決め、夜は寝袋の中へ |
| Wi-Fi | 1日 USD 2〜5 | 必要な日だけ。MBCより上では不安定か使えない。そもそも繋がらないことも多い(→通信の記事) |
| ホットシャワー | USD 3〜5 | 低所で浴びる。シヌワ(2,340m)が快適に浴びられる最後のポイントとされる。高所では冷えるリスクのほうが大きい |
ティーハウスの料金構造には特徴があります。部屋は驚くほど安く、食事で採算を取る。低所なら1泊 USD 5〜10、高所でも USD 10〜15 という水準です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 部屋の設備 | 木のテーブルとベッド、枕、毛布——基本的にこれだけ。トイレは和式(しゃがむ形)か洋式で、部屋の外にあるのが標準 |
| 毛布 | 用意されるが質は高度と季節で変わる。多くのトレッカーが自分の寝袋を持ち込む |
| 食事 | 1食 USD 3〜7。ダルバートはガンドルンで NPR 450前後、ドバンで NPR 700〜800 |
| ダルバートの利点 | おかわり自由が基本。1日中歩く行程では、量あたりの価格でこれに勝るものがない |
既存のプランでは「山中の現金は1日 NPR 4,000〜6,000 × 6日+ジープ代 ≒ NPR 50,000前後」としています。上で調べた実勢価格で、この数字が妥当か積み上げてみます。
| 項目 | 1日あたり | 備考 |
|---|---|---|
| 部屋 | USD 5〜15 | 低所は安く、MBC・ABCで上がる |
| 食事(3食) | USD 9〜21 | 1食 USD 3〜7。高所ほど高い |
| 水 | USD 0〜3 | 浄水手段を持てばほぼゼロ。買うと USD 3〜9 |
| 充電・Wi-Fi | USD 0〜10 | バッテリーを持てばゼロに近づく |
| シャワー | USD 0〜5 | 浴びる日だけ |
| 1日の合計 | USD 14〜54 実務的には USD 30前後 | 1USD ≒ 130〜135 NPR とするとNPR 4,000前後 |
| 場所 | 評価 |
|---|---|
| タメル(カトマンズ)/ レイクサイド(ポカラ)の認可両替商 | ◎ レートと速度で最良とされる。両地区とも両替所が密集していて比較しやすい。ポカラのレイクサイドはアンナプルナへ向かう直前という点で特に便利 |
| 銀行 | ○ 安心だが営業時間の制約がある。10/24は土曜 |
| 空港 | △ レートは劣るのが一般的。到着直後の少額だけにとどめる |
| 項目 | 実態 |
|---|---|
| トイレ | 和式(しゃがむ形)か洋式。基本的な宿では部屋の外にある。紙は備え付けられていない前提で自分で持つ。夜間に外へ出るので、ヘッドランプを枕元に置く——これは高所では特に効きます |
| 洗濯 | 6日間なら洗わない設計にするのが現実的。高所では乾かないうえ、濡れた衣類は体温を奪います。速乾素材を枚数で回し、下山後にポカラでまとめて処理する |
| 寝具 | 毛布は用意されるが質は場所と高度による。10月末のMBC・ABCを考えると寝袋は持つ(またはポカラで借りる)のが標準(→6章) |
| ゴミ | 持ち帰る前提で。プラスチック削減が進められている地域なので、包装の多い行動食は日本で中身だけ移し替えておくと現地で困らない |
| 部屋の寒さ | ティーハウスに暖房は基本的にない。暖かいのは食堂のストーブの周りだけで、部屋は外気温に近い。寝る前に食堂で温まってから部屋へ移る、という動線になる |